2015年11月

楽園の中盤戦終了。いよいよ後半戦へ

11月29日(日)日本時間午前10時
南緯11度50分、東経154度40分
南東の風18kt(約9m)、天気曇り、気圧1013hPa

今、南太平洋の真ん中、ソロモン海とコーラル海のちょうど分かれ目の地点でブ
ログを書いています。
斜め前からの強風を受けて艇はグッと傾き、波の高さは約3m。
時折波が舳先に激しくあたって、ドシンという重く痛々しい音ともに、デッキに
大量の海水が流れ込んでくる。
ドシーン、ザバババ、ドシーン、ドシーン、ドシーン、ザバババ、、、
思えば昨日までは、まさに楽園だった。

小笠原出港後、最初の一週間で北半球の北東貿易風帯を突破した後は、絵に書い
たような赤道無風帯に入り穏やかな日々の連続。
風も波もない水平線の中で、変化の少ない毎日の楽しみといえば、食事と音楽を
聞きながら全員で海を眺める夕焼けショータイムくらい。
いつも船酔いを気にするハラケンが船内で毎日パソコンを打ち、僕は足腰がなま
らないようにデッキで何にも捕まらずスクワット体操に励む。昼食はテーブルを
セットし皆でピクニック状態。
本当にそのくらい揺れない日々が一週間も続いたのだ。

でも、楽園は長くは続かない。
エンジンは快調だけど燃料はそんなに持たないし、僕らは先に進まなくてはなら
ない。

天気予報のお告げが南東貿易風が吹き始めると予想していた28日の夜、我々は物
凄い激しい雨にあった。その雨は、これまでのけだるい暑さを一蹴し、稲光が空
を駆け巡って久しぶりにクルー全員に緊張を強いるものであった。
そして雨が止んだ今日未明、いよいよ貿易風がやってきたのだ。

このあとはオーストラリアに向けて、いよいよ後半戦へと進みます。
この貿易風を乗り切った先には、広大なオーストラリア大陸が、狭い入り口の奥
に悠然と広がるシドニー湾、Port Jacksonが見えてくるはずだ。

モリモリ

11月27日

 チームベンガルの日本側通信隊長のワタナベさんが送ってくれるニュースによ
れば、先週行われたG1マイルチャンピオンシップでモーリスが勝ち、春の安田記
念と合わせてマイルG1に連勝したようだ。マイル競争とは1600mで争われる
レースで、人間の競争で言えば400m走に当たるかな?スピードと持久力が要
求されるとてもハードな距離なんだな。モーリスは物凄い末脚を持っていて最後
の直線で異次元の足を見せてくれる馬だから、Rムーア騎手を背に差し切りか追
い込みの凄脚を見せてくれたのかな?久々にマイラーのスターが出てきた感じだね。
 私の現役時代は逃げ一辺倒だった。得意な距離1800~2000mの左回り
で、府中や新潟の500万や1000万条件で3回勝たせてもらった。(ちょっ
と自慢・・・)そのぐらいの距離になると、他の馬は折り合いをつけて最初は飛
ばさないものだけど、私はとにかく、最初からハナに立った。グイグイ行った。
いや、それしかなかった。勝ったレースはみな、他の馬が折り合い過ぎて直線に
入っても私との差を詰め切れずに、あれよあれよという間にまんまと逃げ切って
しまう、というパターンだった。きっとマイルだったら通用しなかっただろう
な・・・。

 まあ、そんな話はどうでもいいんだけど、陸上の1マイルが1600mなのに
対して、海上での1マイルは1852mと決まっている。
1NM(Nautical mile 海里)=1852m
 これは北極点から南極点までの子午線を180で割ってそれをまた60で割る
とその数字になる。つまり180で割った数字が緯度1度分の距離で、それを
60で割ると緯度1分の距離となる。これが1NMで1852mなのだ。こちらの
方は至って科学的な算出のされ方をした数字といえる。
 では何故陸と海とで1マイルの距離が違ってしまったのか・・・。これについ
てはよくわからない。陸上でマイルという単位を使うはUSAが主だから、ヤード
やインチなどと同様に独自のよくわからない理由がきっとあるのだと思われ
る・・・。
 また、海上でのスピードの単位は主にノット(Knot)が用いられる。1ノット
は秒速約51.4cmで時速に代えると、×60×60で、約1852mということに
なり、時速1ノットで1時間走ると1NM進むことになる。
 ということは、時速10ノットで走っている場合は時速18.5kmで走って
いるわけだから、3時間を切るペースで走っているマラソンランナーほどのペー
スということになる。
 ベンガル7はレースの時などは理想的な角度と強さの追い風が入った時など時
速20ノットを超えるペースで帆走る時がある。それでも時速37km程度だと
いうことになる。ましてや現在のような回航になると風がなくてエンジンに頼っ
てトボトボと走る時などは時速4~6ノットに落ち込んでしまう。これは早歩き
かジョギング程度のスピードということになる。平均すると7~8ノット平均と
いったところだろうか。
 そんなスピードで蒲郡からシドニーを目指して進んでいるわけだから、この航
海は気が遠くなるような旅であるには違いない。
 でも、飛行機などの移動と違って身体と心が同時に動いていくから、一日一日
が、その時その時が、自分の地点になるんだな・・・。だから目的地に到着した
時何故か、太平洋って、地球って、結構狭いんだなと感じる。とても不思議な感
覚だけど・・・。

 現在、南緯7度を越えてソロモン海からコーラル海へと向かっております。昨
日は満月で星が見えづらかったけど、南十字星が高さを増してきて、オリオン座
は真上に昇るようになりました。もう、北斗七星はほとんど水平線に見え隠れす
るほどです。

                           ハラケン

11月24日

 Fish on!
 朝6時過ぎに小意を感じてデッキに上がると、座長と課長がニンマリとした顔
で座っていた。用を済ませて戻ろうとすると、
「仕留めましたよ、マグロ・・・」と課長が笑顔。
 朝一で流しておいたケンケン(ヨットの後部からトローリングのように疑似餌
を流して釣るスタイル)のルアーで70センチほどのキハダマグロを釣り上げてい
たのだ。
「もう、捌いて冷やしてありますよ」と座長も満面の笑みを溢した。
(70センチのキハダが冷蔵庫で眠っている・・・これから3日間ほどはまぐろ三
昧だ!)とサケダイスキもほくそ笑んだ。

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 朝8時森シェフが起きがけから何やらゴソゴソとシンクに向かっていた。バン
クで体を起こして覗き込むと、餅の袋を取り出して何やら煮込んでいる。暫くす
ると甘い香りがキャビンに漂った。
「お汁粉出来ました」とデッキ上の座長課長呼びかけた。
 そうそう、太平洋を東西南北何度も往復してきたベンガル回航チームの記念行
事として、日付変更線や赤道を通過した際にお汁粉を賞味するという習慣があ
る。何故?なんでお汁粉なの?と聞いても理由は定かでないらしいが・・・。
 とにかく、朝食は餅が2つ入ったお汁粉の甘味が新鮮で元気が出てきた。

 そして待ちに待ったお昼がやってきた。
 今日のお昼は当然、まな板一杯に一口大に盛られたキハダマグロの刺し身だ。
森シェフの後ろ姿が今日は料亭の板さんに見える。ワサビ、ショウガ、ニンニ
ク、ラー油を使い分けながら我ら4人のオジサンはなんと4合の飯をほとんど無
口で平らげた。一人頭なんと一合飯である。一日のほとんどを立ち尽くすか、
座っていることを考えれば、随分と燃費の悪い連中だと揶揄されても仕方ない
が、なんと言われてもいい。
 美味かった、新鮮だった、ありがたかった。

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そういえば、5日ほど前にもケンケンの仕掛けを食い千切って逃げたあの2m
を超えるカジキマグロはどうしているかな?
 痛みなのだろう、仕掛けを口にかけたまま血を流して海面を何度も飛び跳ねて
もんどり打ちながら、ベンガル7を睨みつけて一周りしてから去っていったあい
つ・・・。今頃はサメの胃袋に収まっていることだろうな・・・。
 尊い、2匹のマグロの命に合掌・・・。

 小笠原を出てもう10日が過ぎた。
 明日は満月だ。

                      ハラケン

赤道をテーマにした食事。。。おいしそーう。
最近海況がいいからか、ブログが届く頻度が高い!
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11月23日

ネプチューン代理の襲撃の後、陽が傾き始めると再び青空が訪れて海は完全なる凪となった。赤道無風帯に突入したのだ。赤道まで残り30マイルとなった時点で機走による艇速は5ノットほどとなり、赤道通過は日付の変わる直前になりそうだった。
顔に付いたホイップクリームを拭き取ってから、赤道ディナーの仕込みを進めていた森シェフが夕暮れ時になってデッキに出てきて、4人のオジサンは昨日に続いて西の空に展開する夕陽の炸裂を楽しんだ。
そして午後7時過ぎ、満を持して森シェフの料理がデッキに運ばれてきた。テーマは当然のこと、赤い道である。

スパニッシュオムレツ・・・日が経って怪しくなってきた大量の卵を使い、レトルトのミートソースと炒め玉葱とパプリカを具材に、弱火でゆっくりとフライパンで蒸し焼きにした。出来上がりに、フライパンの中の丸いオムレツの中央にケチャップで赤い線が引かれた。うっすらとした焦げ目とモチモチとした食感に微かなトマトソースの香りが絶妙。
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カナッペ・・・小笠原で買い足しておいたクラッカーの上に乗ったのは、コーンビーフと茹で卵にピーマンのみじん切りとコーンを加えマヨネーズで和えて、最後にカレーパウダーを振りかけたもの。食感とエスニックさが冴える逸品。まな板の中央にサラミの赤い道を引いて両側に盛り付け。
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じゃが芋のジュノベーゼ和え・・・茹でたじゃが芋をレトルトのジュノベーゼパスタソースで和えたもの。これにもパプリカの赤い道が描かれた。
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塩キャベツ・・・昼から水に漬けて冷やしておいたパリパリキャベツを塩と胡麻油で和え、焼き海苔をまぶしたもの。懐かしい箸休め。
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 以上の4品がデッキ上の食卓に並んだ。

満月にあと4日ほどで届きそうな贅沢な月灯りの照明がデッキに降り注いでいた。小笠原で別れたバーテンダー森が蒲郡で選んでくれた、よく冷えたCAVAをプラスチックのグラスに注いで、音のない乾杯をした。うっすらとした淡い闇の中で白い歯が4組み、笑っていた。

そして午後10時11分、ベンガル7は静かに赤道を通過した。

ハラケン 

とうとう南半球に突入。2012年の赤道通過時は天気があまり良くなくて神様来ませんでしたが、今回はフルチューン降臨です。サウザンドサニー号のシャチョーからの差し入れゲームも活躍した模様。
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11月23日

 赤道を目前にして、晴天がにわかに掻き曇り、海の神が現れた。本来であればネプチューンが現れるところであるが、出張中ということでネプチューン代理のフルチューンとかいう我々には聞き慣れない神がやってきた。
 この神は赤道を初めて通過する航海者を見つけてはイジメるという質の悪い神様で、海を渡る者たちに恐れられていた。今回、ベンガル7回航メンバーで唯一、赤道を初めて通過するのは意外にもモリ航海士だった。目ざとくもその存在を見つけた代理の神様はベンガル7のデッキに、ボリボリと音を立ててカッパエビセンを食べながら現れるとモリ航海士の首根っこを捕まえた。
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 今回のイジメはフルチューン神がアメリカから持ち込んできた PIE FACEというとてもアメリカ的な他愛もないゲームで、ロシアンルーレットまがいのものだった。内容はフルチューン神とモリがじゃんけんをして負けた方がセットされた位置に顔を入れて、ルーレットで出た数字だけバーを回転させ、ギアが外れたらホイップクリームが顔にヒットするという、なんともお馬鹿なものだった。
 ところが、ここでフルチューン神は神様の強権を発動し、モリの右手を養生テープで拳に固めてグーしか出せないようにしたのだ!なんとも卑怯なやり方だが、ネプチューンの代理というだけあって負けることが許されなかったのだろう。

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 当然のこと、何度やってもそのゲームをやらされるのはモリの方であって、ホイップクリームが顔に炸裂するのは時間の問題だった・・・。

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 ゲームが終わり、ネプチューン代理はモリの顔がホイップクリームにまみれるのを確認すると不敵な笑顔を浮かべて、幾分ホッとしたような顔をすると、再びカッパエビセンをボリボリと音を立てて食べながら、深い紺碧の深海へと戻っていった・・・。

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ハラケン

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