2016年03月

サケダイスキからレースレポートが届きました。
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香港では1週間の滞在中、ほぼ1度も晴れた空を見上げることがなかった。石原さんによればこの季節は香港では最悪の季節らしい。曇りと雨が続き湿度は連日90%以上……。そして街の様子も、以前はほとんどなかった1人で入れる飲食店が増えて香港らしい趣が随分と変わってしまったという…。それでも市場近くに美味しい昔ながらのザワザワした円卓の食堂を見つけると、石原さんは皆んなを誘って3日連続で通っていた。
そして、やはり曇天で小雨のぱらつく3/23に、China sea race スタートラインを切った。はじめは風がほとんどなく、南シナ海へ出るのに苦労したフリートだったが、一旦東風が入ると俄然高速レースとなった。ベンガル7は2~3番手を守りつつひたすらスービックを目指して快走を続けた。そして弱風が予想されたフィニッシュ付近でも風が落ちることはなく、予想よりもかなり早く25日の夜10時過ぎにフィニッシュラインを通り過ぎた。レース中接戦を繰り返していた香港のTP52 Free Fire には、わずか数分前のフィニッシュとなった。また、ラインオーナー(着順1番手)となった Alive は66ftながら90ftのラガマフィンが持っていたコースレコードを塗り替えるほどの高速決着となった。

レース後に行われた表彰式では久しぶりにクラス3位の表彰を受けて、クルーの笑顔が夜のスービックマリーナで輝いた。
やっぱり、表彰を受けるというのはいつも嬉しいものである。相手を祝福して自分が祝福されると、お酒の味もいつもと違う。そして自分たちのチーム内だけではなくて、他のチームのクルーたちとの心が近くなる。これがあるからやめられないのです……。

スタート前のセレモニー
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チームベンガル in 香港
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笑顔とは何ものにも代えがたいね……
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51歳と52歳のバウマン
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さて、今日から石垣島へ向けて出航です。この旅も第3コーナーを回って第4コーナーにさしかかる頃となってきました。ここではイキたい気持ちをおさえつつ、脚をタメながら後続馬の足音に耳を澄まして手綱が動き始める、といったところかな……。
4/29スタートの沖縄東海レースがスタートした時、最後の直線に入ります。


サケダイスキ 
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Bengal7は3月29日1200にフィリピンSubic bayを出航しました。
このあとは、いよいよ長い航海の終盤戦、日本に向けての航海!
まずは石垣島を目指します。
距離は700マイル程度、約一週間とこれまでの回航に比べ比較的短めですが、油
断は禁物。
前半は漁船がひしめくフィリピンルソン島沿岸。
中盤は荒れる海域で名高いバシー海峡。
後半は沖縄のサンゴ礁域と非常に気の抜けない海が続きます。
今回も安全第一で言ってまいります!

回航メンバー 石原、原、古川、森

前略     南波誠さま

   時候の挨拶など苦手な私ですが、何故かこのお彼岸の時期にあなたにお便りを出したくなりました。
   それはきっと今私が、ここ香港にいるからなのだと思います。
   あれからもう19年になりますね。早いものです。1997年の3月から4月に開催されたSAIL OSAKA レースのことです。私たちは一緒にESCAPE ONE に乗ってレースに出ましたね。香港をスタートして沖縄へ向かう第1レグと、鹿児島をスタートして大阪へと向かう第2レグ。その第2レグがあなたの最後のレースとなってしまいました……。

   1987年にあなたに初めて会って以来、ヨットは私にとって仕事となり、勝つためにする勝負事となりました。でもあなたはいつも、それだけやないデ、ヨットってもっとオモロイもんや、ヨットってもっとカッコええもんや、とおしえてくれました。そしてホントにあなたといるといつも笑いが絶えませんでした。
   今でも忘れられないのは、ウィットブレッドと2回目のアメリカ杯挑戦が終わった1995年、私が酒の飲み過ぎで東京の病院に入院していた時、あなたは誰かに聞きつけて見舞いに来てくれて、涙と鼻水を流しながら私をレースに誘ってくださったことです。私はその後酒を暫くやめて、1年半に渡ってあなたとアメリカ東海岸やハワイのサーキットを回らせてもらいました。あれは私にとって最も楽しかった記憶の一つです。

   その直後でしたね。SAIL OSAKAに出たのは……。バシー海峡でかなり吹かれて航海機器を失いながらもトップフィニッシュした第1レグの後、何故かあなたはとても疲れていました。いつもの辛辣でオモロい冗談が出てきませんでした……。そして運命の第2レグ。突然に吹き上がってきた、黒潮とは逆方向の強風が生み出した物凄い横波を受けたあなたは舵の上を吹き飛ばされた……。もし私が舵を持っていたら私が飛ばされていたことでしょう。それでもあなたはスタンションに捕まって頑張りましたが、あと数秒、あと50センチ、私の手が届きませんでした……。あの時のあなたの、私に懇願するような眼も忘れることはできません。
   そして、あなたは消えるように猛り狂う海の中に沈んでいきました……。

   私は今、外洋レーサーであるチームベンガルで太平洋の色々なレースに出ています。トランスパックやシドニーホバートなどに自力でヨットを回航してレースに出ているのです。そしてなんと、あんなにレース以外の航海が嫌いだったこの私がそれらのほとんどの回航にも乗っているのです。信じられないでしょうね…。2012~2013年にはシドニーホバートとトランスパックを連続して参加するために蒲郡~シドニー~ウェリントン~タヒチ~ハワイ~LA~ハワイ~小笠原~蒲郡という2万マイルの海の旅をしてきました。私は日本チャレンジに選んでもらってアメリカ杯というマッチレースでヨットを始めましたが、本当は外洋のレースや外洋の航海が好きだったみたいです。だから、ウィットブレッドに出ていなかったら、あなたが東京の病院で私を誘ってくれなかったら、ここまでヨットを続けていなかったでしょうね…。

   今いるチームで私は楽しくヨットを仕事に出来ています。今回はChina sea raceといって香港からフィリピンのスービックというところまでのレースです。昨年末のシドニーホバートの後、ヨットを回航して香港まできたのです。
   このチームにはあなたがよく知っている懐かしい顔もたくさんいます。九州の高木さんに長尾に伊藝がいます。長尾は1人、伊藝は3人の子持ちですよ!もちろん奥さんもいます…笑。そしてニッチャレでテンダーボートのアシスタントだった平野もいます。彼はSAIL OSAKAにこのチームのトレーニーとして乗って本格的に外洋レースを始めたのです。それに、あなたは会ったことがないと思いますが、大学のヨット部の後輩もいますよ。彼はチームのナビゲーターでとても真面目な人間です。随分とあなたとはキャラが違いますが、我が道を行くところはあなたと似ているかもしれません。校風なのでしょうか?
   また、このレースが終わったらスービックから宜野湾までヨットを回航して、4月29日スタートの沖縄東海レースに出場します。このレースは2年に1回あるレースですが、チームベンガルは2連覇中で今回は3連覇がかかっています。途中で、あなたが消えてしまった室戸岬沖を通るはずなので、あなたの好物だったコカコーラを海に流すつもりです。楽しみにしていてください。

   寂しがり屋のあなたのことだから、周りに友達が少なくて泣いているかもしれませんが、あなたが早く逝きすぎたから仕方ありません。私もまだまだそちらにいくつもりはありませんから、またオモロいネタでも吟味して、気を長くして待っていてください。

   私も自分勝手にかなりオモロくヨット人生を歩いてきたつもりですが、もし、あなたが今もこちら側にいたら、もっともっとオモロいヨットにご一緒出来ただろうな・・・なんて思い、ついこのような手紙を書いてしまいました。

 「  ホンマに、ヨットは、最高やでー」
   ホントにその通りですよ。

不尽       サケダイスキ

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サケダイスキからスービック〜香港の回航のレポート届きました。
さて、レーススタートまであと5日!

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ベンガルの回航チームに救世主が現れた!
シドニーを出港して以来2ヶ月以上が過ぎ、マンネリとしてきた回航チームにメデタく定年退職を迎えた石原さんがフィリピンのスービックにて合流し、回航チームに再び笑いの回数が増えて来ました。
石原さんは2012~2013の回航2万マイルにおいても、タヒチ~ハワイ間の回航に盟友寺尾相談役とともに来てくれました。その時も、スケジュールの遅れで予定していたボラボラ島ツアーも出来ずに、たった4日間の滞在中に3日間も入国手続きに要するという前代未聞の事態に陥り、ストレスが溜まりそうなところを、2人の人生のベテランが楽天的な笑いでぶっ飛ばしてくれたのでした。その時のタヒチのホテルで、度付きのサングラスをかけたままの石原さんが「この部屋はなんでこんなに暗いんだ」と独り言を呟きながら暫く気がつかずにいたという逸話は今も語り継がれています。
そして、石原さんは以前ここ香港に会社の出向で住んでいたこともあり香港通なのですが、香港のとどまることを知らない激変ぶりには驚いています。私は19年前にSAIL OSAKAのスタート前に来て以来なのですが、記憶に残っていた赤と黄色の極彩色の夜景は色彩を増してより無国籍化されて、世界中の大都市の同じ部分を切り取ったようです。残っているはずの裏路地の香港を表面だけで包み隠して無機質さを増しているような気がしました。
3/23スタートのチャイナシーレースが終わっても、石原さんは回航チームとともにスービックから石垣島へ、そして宜野湾へと旅を続けてくれます。今回もこれからどんな笑い声と逸話を届けてくれるか楽しみでなりません。 
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厩ならぬ、ベンガル7のバンクでスヤスヤと眠る救いの神子……


追伸

ベンガル7が停泊しているロイヤル香港ヨットクラブはイギリス統治時代を彷彿とさせる由緒あるヨットクラブなのですが、そこのクーロン側を見渡せる落ち着いたラウンジには膨大な蔵書があります。昨日ソファに座ってインターネットに接続していたところ、古川課長が一冊の本を取り出して食い入るように見ておりました。すると、石原さんが「お~~」という声をあげたのでそのページに目を向けると、みなさんご存知のあの方の若かりし日の勇姿が写っておりました……
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Bengal7より3月14日の航海報告です。

3月14日正午現在
lat 17'43N Long 117'53E
天気:快晴 気圧:1017hPa 風向:100度 風速:1kt 波高:0.2m
針路:330度 速力:5.5kt
2月13日のデイランは114nmでした。
艇体、クルーともに良好です。

今日も風の弱い快晴で、回航日和が続いています。
出港日は周りにたくさんいた漁船も、昨日の午後には少なくなり、昨夜は全く船
を見ない非常に穏やかな航海となりました。
今日昼前には、マラッカ海峡と太平洋を結ぶ主要航路に入り、今度は周囲をひっ
きりなしに大型商船が通過しています。商船の目的地は日本や韓国、シンガポー
ルなどアジア諸国が殆ど。これまでしばらく日本を離れて航海していたので、
AISの情報を見ても親近感が湧く地名です。

風が弱い分、ここまでは非常にスローペースの回航。まだ南シナ海を1/3ほどす
進んだあたり。
この後は東よりの風が強まってくる予報なので、ちょっとスピードアップして香
港に向かえそうです。

香港島の入航路入り口まで、あと325マイル。
引き続き安全航海に努めます。

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