カテゴリ: Japan to Sydney 2015

Bengal7は、12月10日現地時間午前4時にシドニーPort Jacksonに入港しました。
現在は湾内を散策しながら入国手続きの開始を待っています。
入国後は3年前と同じSydney City Marineに繋船し、レース準備に入ります。
おかげさまで安藤一座は、今回も無事に回航の責務を果たす事ができました。
サポート頂きました皆さまのお陰です。本当にありがとうございました。

数日の潜伏期間を経て、ボリューム一杯のブログが届きました!
「ヒーブツー」。。。。私も2011年のロングビーチへの回航の時に経験したけど、聞きたくない単語!

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12月6日

お久しぶりでございます。ちゃんと生きておりました!・・・笑

数日前、・・・もう日にちと曜日の感覚が薄れております・・・オーストラリア大陸に最終アプローチをかけた時点で、お告げによれば3日後から前線の通過によりブリスベン周辺の海が大荒れとなり30ノットオーバーの風と波高4mのうねりが起きるということで対策を検討した結果、ブリスベンの北にあるフレーザー島で囲われたハーベイ湾という砂州の入江に避難することになった。その入江は今回使っている古いチャートに鉛筆書きで丁寧に立ち寄った跡が書き込まれていたのだ。我々が目指した対面の本土側にほんの少しの時間だけ寄ったことが克明に記録されており、電子チャート全盛の今だからこそなんとなく心が暖かくなった。この書き込みは安藤座長も知らないというから多分丹羽徳子さんが2回めのメルボルン大阪レースの回航の折に寄られたのではないか、というのが我々の推測である。

アプローチの夕方、緑色がかった白い大きな嘴をした濃い栗毛の愛嬌のある水鳥がやってきてスターンのライフスリングの上に止まった。すると次々に仲間が現れて我先にと羽を休め始めた。まるで今晩のお宿を借りに来たように・・・。するとそれが呼び水になったように今度はバンドウイルカの群れが現れて30分ほど遊んでいった。中にはお腹を見せて空中をジャンプしてくれたりするやつもいたりして、時を忘れて楽しませてくれた。やがて、イルカが去り陽が沈んでも例の鳥達は本気のお泊まりモードとなりポートのライフラインに2羽、バウスプリットに4羽、一晩を明かしていった。まことに図々しい奴らで、夜が明けるとセイルとバウにたっぷりと糞を置き土産に飛び立っていった。勿論、宿賃はタダである・・・。


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バウスプリットにチェックインした鳥もイルカの腹見せジャンプを見学

夜明けの交代で座長課長のワッチになってすぐ、デッキ上が何やら騒がしかった。しかし、私はそのまま寝てしまったのだが、8時の交代でデッキにあがるとまたしても二人はしたり顔である。Fish on ! またしても課長が執念で、今度は60cmほどのカツオを釣り上げたという・・・。デッキには鮮血が残り、血糊がついた革手袋がピースサインを作っていた。すでに捌かれたカツオくんは冷蔵庫に冷えていて、おまけにビールも冷やしてあるという。これで、ベイでの避難の準備は完璧に整った。そしてついにオーストラリア大陸がウェルカムと言わんばかりに朝陽に映しだされていた。

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すっかり太公望らしくなってきた課長。仕留めたカツオをもう一度仕留める!

と、ここまでは良かった・・・。しかし、ベイをクローズホールドで風上へと上っていくと、陸地の影で風が収まるどころかドンドン上がっていく・・・。よく見ればフレーザー島はあまりに背が低くて風よけには向いていないことが判明した。そこで、我々はベアポールにして(メインもジブも下ろして)ヒーブツー(舵を固定して一定方向に向けて漂うこと)することにした。風はますます上がり40ノットにも達する勢いだ。そして、誰もいないハーベイ湾でベンガル7はただひたすら2日間に渡って漂い続けた。下ろす際にジブセイルを破損し、思った以上の不規則な3次元の揺れに辟易として、カツオくんでビールという気分でもなくなってしまった。

見張り番でデッキにいたモリモリが「大航海時代の漂流はどんなだったんですかね・・・いつ終わるともわからないで」と独りごちた。「僕らは2日だけとわかっていてもこんなに憂鬱になるんですからね・・・」
まったくである。漂流とはきついものですなあ・・・陸でも海でも・・・。先の見えない漂流は人を狂わせるんじゃないかとも思う。いや、もう狂ってるからここにいるのかもしらんがね・・・。

そして昨日の朝、久しぶりにセイルを上げた。それもストームジブだ。メイン以外はこれしかない。まだ風は25ノット以上吹いているからメインはやめてストームジブのみとなったのだ。たまに風が落ちると極端にスピードが落ちて前に進まない。3000マイル以上走って残り600マイルというのに・・・。苛立ちを冗談に代えてひたすら走るしかなかった。

そして、ちょっとしたご褒美なのか・・・美しい日没が訪れた。沈みゆく太陽がこんなふうに言っているような気がした。「物好きで阿呆な日本人たちよ。ようこそオーストラリア大陸に。だけどシドニーはまだまだ先だよ、せいぜい苦労しなさい。ざまあ見ろ!また明日の朝に会おう・・・」
そうして、小笠原を出航して17日目?が終わったのだった・・・。
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追伸: 
今日の朝、やっとメインセイルが上がり快調に南下を始めました。でも未だに苦しい上りでブリスベンまで150マイルあまり。そこからシドニーまでは300マイルあります。次のお告げによると明後日ぐらいから今度は北の強風30ノット以上が予想されているとか・・・。まだまだ、楽をさせてくれそうにありませんねえ・・・。

ハラケン 

サケダイスキの前回のワッチペア替えの提案の陰謀、気づいてました私。12月最初のブログ!

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12月1日

 
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今日から日本は師走か・・・。こちらは未だ帆走である。
 
 世の中には色んな男と女がいる。モテる男にモテない女、運の良い奴悪い奴、人のいいやつ悪い奴、気風のいい女セコイ男、そしてありがたがられる奴とそうでない奴・・・。そのありがたくない人間として長く代表格を務めてきている中に”雨男”がいる。
 運動会の日、ゴルフの日、釣の日、野外コンサートの日、などなど・・・ことごとく、その日に限ってという時に天気予報にすら反してして雨を降らせてきたきた男や女を身近に一人や二人はお持ちではないだろうか?
 実は2年前のベンガルの回航チームにも強烈な、信じ難い、予想を遥かに超えた雨男が実在したのである。現在はチームにいないのでここでは頭文字をとってEZとしておこう。2年前、ベンガルの回航チーム安藤一座は5人のメンバーで太平洋をぐるりと巡る2万マイルの興行に出た。その第1区間は今回と同じく蒲郡から
シドニーまでの区間だった。回航では2人一組でワッチ(Watchのことを日本ではワッチと呼ぶ)を組み4時間交代で見張りと操船を行うのだが、その時は安藤座長と古川課長が組み私とEZが組んだ。赤道に接近して雨が増え始めるのは当たり前なのだが、どうしても私たちの組みで降られる回数が圧倒的に多い事が周知の事実となった時、当然「雨男はどっちだ?」などという冗談が出てきた。その頃はまだ笑って済ませる状態だった。しかし、である。そのうちに、あまりにもくっきりと私たちの組みが終わると雨が止み、私たちの組みがデッキに出ると雨が降る、という4時間刻みの天候の変化が明確に起こるようになってきたのだ。
これは笑い事ではない、との思いがメンバーに芽生え始め、雨モノの冗談が出なくなってきた。
 なんとかシドニーまでたどり着くと、皆な雨のことは忘れていたが、私だけは忘れていなかった。今後もニュージーランド、タヒチ、ハワイ、LA、ハワイ、日本と続く長い旅を雨と共に過ごすなんてまっぴらである。それに自分が雨男とは思えなかった。そこで、私はとぼけた顔で座長に「気分転換にメンバー構成をかえてみませんか?」ともちかけた。座長はまさか雨男の追求とは思わずに快く応じてくれたのだが、そこが運命の分かれ道だった。
 それ以降、みなさんのお察しのとおり、座長はEZと二人でのべ8ヶ月に渡って回航の間中、ほぼ8割以上の確率で雨に降られ続けたのだ。私は座長に申し訳なく思いながらもとぼけ顔を続けたことは言うまでもない。今でも忘れられないのは、ハワイから小笠原に向かう途中、ワッチ交代の時間を1時間早く間違ってEZがデッキに上がってきたところ、それまで満天の星空だったのがいきなり黒い雲が現れてドシャ降りのスコールを運んできた時だ。私と課長は顔を見合わせて座長を哀れんだ・・・。

 今回のワッチは、やはり4時間毎で座長課長の組みとハラモリ組みに分かれているのだが、どうも座長の組が多く雨に降られる傾向にある・・・。座長課長の組は前回のシドニーまでの区間で晴れ続きだった実績があるから何故だろう・・・と思ったところ、まさかEZの呪いが罹っているのではないか、という話になっている。しかしながら、現在の南半球の貿易風帯に入る前のドシャ降りはハラモリ組であったし、座長の組の降水確率は前回のEZと組んだ時を下回っている。その代わりに座長の組は必ずと言っていいほど強風をもたらすことが明白となりつつある。4時間後の交代時に必ず風が風が2~3ノットは変化するのだ。

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 現在は南緯20度に近づき、3日後に予想される前線からの南風30ノットと波高4mを避けるために、ブリスベンの北にあるグレートバリアリーフの南の入り口に位置するフレーザー島の入江を目指している。あと2日で到達できなければ前線に出会ってしまうから、今は続く限りの貿易風で突っ走っている。勿論のこと、EZの呪いが解けた新しい”風男”座長の組がもたらす強風は平均20ノット近くで気象予報を覆して今も続いている。

 もう、1000マイルを切ったが、今後の気象予報は上記のような余談を許さない状況となっているが、フレーザー島の砂州は楽しみだ。大井川の水嵩が増して渡れないで、旅籠に一泊・・・といったところかな。美人女将の代わりに美しい入江を期待している。

                          ハラケン

楽園の中盤戦終了。いよいよ後半戦へ

11月29日(日)日本時間午前10時
南緯11度50分、東経154度40分
南東の風18kt(約9m)、天気曇り、気圧1013hPa

今、南太平洋の真ん中、ソロモン海とコーラル海のちょうど分かれ目の地点でブ
ログを書いています。
斜め前からの強風を受けて艇はグッと傾き、波の高さは約3m。
時折波が舳先に激しくあたって、ドシンという重く痛々しい音ともに、デッキに
大量の海水が流れ込んでくる。
ドシーン、ザバババ、ドシーン、ドシーン、ドシーン、ザバババ、、、
思えば昨日までは、まさに楽園だった。

小笠原出港後、最初の一週間で北半球の北東貿易風帯を突破した後は、絵に書い
たような赤道無風帯に入り穏やかな日々の連続。
風も波もない水平線の中で、変化の少ない毎日の楽しみといえば、食事と音楽を
聞きながら全員で海を眺める夕焼けショータイムくらい。
いつも船酔いを気にするハラケンが船内で毎日パソコンを打ち、僕は足腰がなま
らないようにデッキで何にも捕まらずスクワット体操に励む。昼食はテーブルを
セットし皆でピクニック状態。
本当にそのくらい揺れない日々が一週間も続いたのだ。

でも、楽園は長くは続かない。
エンジンは快調だけど燃料はそんなに持たないし、僕らは先に進まなくてはなら
ない。

天気予報のお告げが南東貿易風が吹き始めると予想していた28日の夜、我々は物
凄い激しい雨にあった。その雨は、これまでのけだるい暑さを一蹴し、稲光が空
を駆け巡って久しぶりにクルー全員に緊張を強いるものであった。
そして雨が止んだ今日未明、いよいよ貿易風がやってきたのだ。

このあとはオーストラリアに向けて、いよいよ後半戦へと進みます。
この貿易風を乗り切った先には、広大なオーストラリア大陸が、狭い入り口の奥
に悠然と広がるシドニー湾、Port Jacksonが見えてくるはずだ。

モリモリ

11月27日

 チームベンガルの日本側通信隊長のワタナベさんが送ってくれるニュースによ
れば、先週行われたG1マイルチャンピオンシップでモーリスが勝ち、春の安田記
念と合わせてマイルG1に連勝したようだ。マイル競争とは1600mで争われる
レースで、人間の競争で言えば400m走に当たるかな?スピードと持久力が要
求されるとてもハードな距離なんだな。モーリスは物凄い末脚を持っていて最後
の直線で異次元の足を見せてくれる馬だから、Rムーア騎手を背に差し切りか追
い込みの凄脚を見せてくれたのかな?久々にマイラーのスターが出てきた感じだね。
 私の現役時代は逃げ一辺倒だった。得意な距離1800~2000mの左回り
で、府中や新潟の500万や1000万条件で3回勝たせてもらった。(ちょっ
と自慢・・・)そのぐらいの距離になると、他の馬は折り合いをつけて最初は飛
ばさないものだけど、私はとにかく、最初からハナに立った。グイグイ行った。
いや、それしかなかった。勝ったレースはみな、他の馬が折り合い過ぎて直線に
入っても私との差を詰め切れずに、あれよあれよという間にまんまと逃げ切って
しまう、というパターンだった。きっとマイルだったら通用しなかっただろう
な・・・。

 まあ、そんな話はどうでもいいんだけど、陸上の1マイルが1600mなのに
対して、海上での1マイルは1852mと決まっている。
1NM(Nautical mile 海里)=1852m
 これは北極点から南極点までの子午線を180で割ってそれをまた60で割る
とその数字になる。つまり180で割った数字が緯度1度分の距離で、それを
60で割ると緯度1分の距離となる。これが1NMで1852mなのだ。こちらの
方は至って科学的な算出のされ方をした数字といえる。
 では何故陸と海とで1マイルの距離が違ってしまったのか・・・。これについ
てはよくわからない。陸上でマイルという単位を使うはUSAが主だから、ヤード
やインチなどと同様に独自のよくわからない理由がきっとあるのだと思われ
る・・・。
 また、海上でのスピードの単位は主にノット(Knot)が用いられる。1ノット
は秒速約51.4cmで時速に代えると、×60×60で、約1852mということに
なり、時速1ノットで1時間走ると1NM進むことになる。
 ということは、時速10ノットで走っている場合は時速18.5kmで走って
いるわけだから、3時間を切るペースで走っているマラソンランナーほどのペー
スということになる。
 ベンガル7はレースの時などは理想的な角度と強さの追い風が入った時など時
速20ノットを超えるペースで帆走る時がある。それでも時速37km程度だと
いうことになる。ましてや現在のような回航になると風がなくてエンジンに頼っ
てトボトボと走る時などは時速4~6ノットに落ち込んでしまう。これは早歩き
かジョギング程度のスピードということになる。平均すると7~8ノット平均と
いったところだろうか。
 そんなスピードで蒲郡からシドニーを目指して進んでいるわけだから、この航
海は気が遠くなるような旅であるには違いない。
 でも、飛行機などの移動と違って身体と心が同時に動いていくから、一日一日
が、その時その時が、自分の地点になるんだな・・・。だから目的地に到着した
時何故か、太平洋って、地球って、結構狭いんだなと感じる。とても不思議な感
覚だけど・・・。

 現在、南緯7度を越えてソロモン海からコーラル海へと向かっております。昨
日は満月で星が見えづらかったけど、南十字星が高さを増してきて、オリオン座
は真上に昇るようになりました。もう、北斗七星はほとんど水平線に見え隠れす
るほどです。

                           ハラケン

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